中井と聞いてパッと場所をイメージできる人は新宿区民でもおそらく少数。飲みに行ったことがある人となると、住民以外ではさらに少ないでしょう。西武新宿線で高田馬場から山手線の外側へ2駅。はっきりいって新宿区の中ではマイナーな街です。
しかし私はこの低~い街が好きです。低~いというのは、西武線の駅を出たらすぐに妙正寺川が流れる、文字通りの標高の低さ。そして、街全体に流れる空気のゆるさというか、寝起きの姿でぶらぶらしていても人目を気にしなくてよさそうな、街としてのハードルの低さです(褒めてますよ)。わざわざ行って飲む価値のある街なんです!
駅の真上には山手通りの高架が走り、そこには車がせわしなく行き交いますが、駅を出たところの商店街は細道で駅前広場のようなものもないし、いきなり踏切があって人の流れがややよどむ。中井は都会に生きる人の焦りのようなものを一気に取り除いてくれる。染め物の街としての歴史もあるし、かつては林芙美子や赤塚不二夫が住んでいたし、実は歴史も文化もある街なのに、そんな感じを全然受けないのがいい。何度も言いますが、これは褒めてますよ!
そんな街だから、入りやすい飲み屋には事欠かない。駅を出てすぐのタコ焼バル「おかめ」はふらっと入ってつまむのにちょうどいいし、赤塚不二夫も行きつけだったという老舗の「権八」でしっかり刺身と焼き鳥と里芋(!)を食べて飲んで行くのもいいし、川沿いでちょっとおしゃれな「あんぷら屋」でワインなんか飲むのもいいし。
中井は谷間なので、北も南も上り坂。南の坂をのぼり、店のとぎれたあたりに唐突に「あ・ど・と」というお店がありますが、なんとここは地下にカラオケのできる部屋を作っております。坂をのぼったぶん低さを求めて地面を掘るとは、さすがあらゆる点で低さが売りの中井!